昭和町の横丁に25年以上も前からのれんを構える、串かつ「串芳」。
カウンターに常連のお客さんが並ぶ、ちょっとしたバーのような雰囲気のお店です。しかし気さくなマスターの繊細な心遣いのおかげで、初めて訪れる方も思わず行きつけの気分でリラックスしてしまいます。
メニューに載った串かつは「お肉」、「肉詰め」、「魚介」、「野菜」、「その他」の各ジャンルに分けられ、品数は豊富。大体のお品が1本100円〜200円というお安さです。
それから、カウンターに掲げられた黒板メニューならぬ白板メニューには今日のおすすめが書いてありますが、こちらがかなりおすすめ。少々凝ったメニューや珍しい食材の物が出されているのですが、どれもとっても美味なのです。
白板には飲み物メニューも書いてあり、この日は「モヒート酎ハイ(生ミントと生ライム入り)」(450円)、「ガリ酎ハイ(甘酢しょうがとはじかみ入り)」(400円)、カタシモワイナリーの「たこシャン」(たこ焼きとのマリアージュを考えて作られたスパークリングワインです)などがありました。
マスターに注文を伝えると、タイミングよく揚げてカウンターに出して下さいます。メモも取らないマスターの記憶力たるや、さすが長年この場所で串かつを揚げていらしただけあります。
「ハモの梅しそ巻き」(白板メニュー)はもう香りの勝利といった感じです。しその葉の香りや食感を通り過ぎるとハモのお味が現れてきます。
「砂ずり(素揚げ)」(100円)もまた、芳醇コリッコリ。
「なすび肉詰め」(150円)は薄くスライスされた茄子と茄子の間に牛挽き肉が敷かれています。間違いない一品です。
「紅天」(100円)は、紅生姜を蒲鉾で挟んだ物。ツーンと来る感じがたまりませんね。
「タコ」(100円)は小粒ながらぷにぷにっとした食感がたまらなく楽しく、2本程いただきました。
こちらは一口かじった「レンコン肉詰め」(150円)。「なすび肉詰め」に続きジューシーです。「串芳」の肉詰めはどれも美味しいと思います。お肉の味付けが絶妙な上に、挟みに使うお野菜とのマリアージュがよく考えられています。串かつという世界の中で、職人の遊びが利いています。
「とうもろこし(素揚げ)」(白板メニュー)はシンプルな一品ですが、口に入れた瞬間「あっ!」と目を剥いてしまう程そこに夏の香りが凝縮されていました。素揚げのとうもろこしを食べるのは初めてだったのですが、食感が引き締まっている分食べやすいと感じました。初めて食べる素揚げのとうもろこしなのに、なんでこんなに懐かしいんだろう……。何年も前の夏の思い出が次々と蘇り、思わず涙がポロポロこぼれます。
「青森県産にんにく素揚げ」(700円・白板メニュー)。この日一番の高額商品でした。
アルペンザルツの岩塩と共にいただくと、にんにくの美味しさが引き立ちます。
「いいだこたこ焼き風」(白板メニュー)の見た目は何の変哲もないイイダコですが、内部にとある具材が入っています。まるで新タイプのたこ焼きを食べているような感覚。是非お試しを。
さて、最後は「〆汁」(白板メニュー)です! なんと、お吸い物の中に揚げ出し梅むすびが入っているという、聞いただけでもお口が咀嚼そして嚥下運動を始めてしまいそうな一品。その美味しさはと言うと、お出汁と三つ葉の香り、香ばしい揚げ出し梅むすびをかじるジューシーな音に、隣のお客さんが「ソレ、何ですか?? 美味しそうですね」と尋ねていらっしゃる程。
以上、いかがでしたでしょうか。
ご紹介しましたように、「串芳」ではシンプルなメニューもさることながら、肉詰めや巻き物などギミック系のメニューに職人の技が冴えています。
そして、気さくなマスターの技術と心遣いのおかげで、心地よく時間が過ぎてゆきます。
常連のお客さん達の世間話や愚痴さえも美味しいおかずとなってしまう魅惑の空間です。
コメント