飛行機で出会う英語には、ある特徴が

飛行機の非常口近くの座席 CAの仕事

2016年頃、ANAの出発時に耳にする機内放送が変わりました。それまで“Doors For Departure”と言っていたものが“Set Slide Bar”になったのです。

これは飛行機が出発するにあたって、ドアを「開けて乗り降りするモード」から「開けると自動で脱出用スライドが出てくるモード」に変更する指示をCAに対して出す業務放送です。

英語の文章としては、違和感があります。“Set Slide Bars”もしくは“Set The Slide Bar”と言った方が自然な英語になります。では、これは文言作成者が英語に疎い人だったということなのでしょうか? 実はそうではありません。

他にもある、不自然な機内の英語

“Beware Of Finger When Turning Retainer”

“Flag Must Be Across Window When Slide Is Engaged”

“Lifevest Under Seat”

1つめの文章は、指を挟む危険性のあるRetainerという設備に貼り付けられている、搭載作業員やCA向けの注意。

2つめの文章も同様に整備士やCAに向けた機内の表示。

3つめの文章は、救命胴衣があなたの座席の下にありますよ、という乗客へのメッセージです。

本来英語に見られるはずの冠詞、“a”、“the”、“your”などがありませんよね。また、“Fingers”と複数形になっているべき単語も、まるで英語の辞書から放り出されたかのように“Finger”とそのまま表示されています。

なぜなのでしょうか?

それは、迅速に、正確に、できるだけ多くの人に物事が伝わるためです。多様な乗客や乗員に対して、限られた時間・空間の中で情報を伝えるため、飛行機ではあらゆることがシンプル化されています。特に、安全に関わりのある文言は上記のように非常にシンプルに表記されているのです。冒頭で紹介したANAの文言も、それまで“Doors”と複数形を使っていたものを極限までシンプルにして考え直した結果、“Set Slide Bar”という言葉にたどり着いたのだと思います。

他にどんな英語表現があるか、機内の座席やお手洗いなどで見つけてみて下さいね。

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