飛行機は搭乗の時と降機の時、BGMが掛かっていますよね。あの音楽を聴くと旅のリズムを感じるというお客様、大変多くいらっしゃいます。
個人的な感想ですが、ANAが採用している葉加瀬太郎さんの「Another Sky」という曲が好きです。
搭乗時に聴くとワクワクしますし、降機時に聴くとフィナーレという感じがする、よく出来た曲だと思います。
安定感や信頼感を醸し出すために、あえてハ長調(♯や♭が一番少ない調性)で作られているのだそうです。
CAにとっては国内線の場合、目的地についた時点で旅が終わるわけでもなく、すぐに折り返し便の搭乗が始まり、また降機……の繰り返しです。そこにお客様とのテンションの差が生まれます。
新人の頃は、BGMを聴くたびにお客様のテンションと自分のテンションの差に混乱していました。
沖縄に着いてお客様はこんなにキラキラした表情をしているのに、どうして私達はすぐに東京に戻らなければならないのだろう!? と。
今では、そのテンションの差こそがCAとして働く楽しさだと感じます。
CAのサービスを「一人一人の心に寄り添う」などと表現することがありますが、私の感覚としては自分の心の中に相手用のスペースが出来て、経験を重ねるに連れてそのスペースが膨らんでくるという感じです。
平日早朝、地方発羽田行きの便。これからお仕事に向かわれるお客様が多く、機内はどこか引き締まったムード。スーツをお召しになったお客様も多く、表情は緊張しています。
一方、私達は羽田に着いたら勤務OFF。帰ったら何をしようかな、と呑気なことを考えています。
そんな便でも、お客様に対しては、少しでもリラックスしてお仕事に臨めるように、少しでも元気になって降りていただけるようにという想いが湧きます。
やっと家に帰れるな、などと緩んだ表情は出ません。
心の中のお客様用のスペースとの間に生じたテンションの差が、自然と調整されるのです。
これはもう心の与圧装置と呼んでよいかもしれません。
どんな気持ちを携えて飛行機に乗るかは、人によって本当にさまざま。
多様なテンションがギュッと詰まった状態で、広い空をひとすじに旅していく。
そのテンションの多様性にふと気付いた瞬間、自分がCAとして働いていることを実感します。
こんなに切なくて、ワクワクすることってありません。
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