ANAとJAL、CAの違いを比較③アナウンス編

空港に駐機されるANAとJALの飛行機 CAの仕事

今回は両社のアナウンスについて、国際・国内線に共通して存在する部分を例に活用しながら、私見も交えて比較して参ります。
尚、記事内で使用している「チーフパーサー」「先任客室乗務員」という言葉は、それぞれANAとJALの客室責任者のことです。

※アナウンスマニュアルは頻繁に改訂される上、CAによって広いバリエーションがありますので、記事の中で紹介する文言は必ずしも実際の通りではありませんことをご了承下さい。

搭乗御礼のアナウンス

まず、搭乗中にスムーズな搭乗を促す案内、電子機器や化粧室の使用に関する案内などがアナウンスされます。
その後、飛行機のドアが閉まりましたら、下記のような内容で改めて搭乗御礼のアナウンスが行われます。お客様の層や、路線、時間帯、天候によっても変わってきますが、おおむね下記の文言です。

ANA
皆様、こんにちは。
スターアライアンスメンバー、ANA◯◯行き、◯◯便をご利用いただきまして、ありがとうございます。
この飛行機はANAとスターアライアンスパートナーとのコードシェア便でございます。
機長は◯◯、チーフパーサーは◯◯でございます。
ご用がありましたら、遠慮なく客室乗務員にお知らせ下さい。
後ほど、非常用設備についてご案内します。
(ここで必ず英語のアナウンスが行われます。)
ただいまから、非常用設備をご案内致します。
皆様、ご覧下さい。

JAL
皆様、今日もワンワールドアライアンスメンバー、日本航空をご利用下さいまして、ありがとうございます。
この便は、日本航空◯◯便、◯◯空港行きでございます。
この便は◯◯航空、◯◯航空……とのコードシェア便でございます。
機長は◯◯、私は客室を担当致します◯◯でございます。
携帯電話など、電波を発する電子機器の使用は法律で禁じられております。
機内モードなどに設定するか、電源をお切りください。
機内は化粧室を含め、全席禁煙です。電子タバコ等もご使用になれません。
それでは、どうぞごゆっくりお過ごし下さい。
(ここで必要に応じて英語のアナウンスが行われます。)
ただいまから非常用設備についてご案内致します。
皆様、必ずご覧下さい。
ご質問がございましたら、乗務員にお尋ね下さい。

いかがでしょう。
一番大きな違いは、英語のアナウンスの有無だと思います。ANAは国内線であっても殆どの場合英語のアナウンスを実施します。一方、JALは国内線では、お客様の状況に応じて実施するかしないかをその都度判断します。
個人的な意見ですが、「ANAとJAL、CAの違いを比較①性格編」にも書いたANAの国際線に掛ける熱意が、こんなところにも現れているような気が致します。

次に、客室責任者を紹介する際、ANAでは「チーフパーサーは◯◯」という表現を使用します。一方、JALでは「私は客室を担当致します◯◯でございます」と言われますね。これは恐らく何十年も前から変わらず使われている表現です。「客室責任者」などの単語を使わず「客室を担当致します」と表現する辺り、やわらかな大和言葉という感じでいかにもJALらしいアナウンスだと思います。

社名の表現にも個性が表れています。ANAは「エーエヌエー」と名乗りますが、JALは「日本航空」と名乗ります。
「全日空」より「エーエヌエー」の方が親しみやすい感じを受けますし、「ジャル」より「日本航空」の方が丁寧な感じがします。

余談ですが、搭乗御礼の文言が流れた後、全てのCAが通路に立ち、お客様に一礼を行うのをご覧になったことがあるかもしれません。このお辞儀はANAが最初に始め、その後JALが取り入れたそうです(聞いた話なので、もしかしたら事実と異なるかもしれません)。
お互いに意識し合ってサービスを作ってきたことが分かるエピソードですね。

お客様をお見送りするアナウンス

いきなりお見送りに飛んでしまって恐縮ですが、さっそく例文を見ていきましょう。

ANA
皆様、◯◯空港に着陸致しました。
ベルト着用サインが消えるまで、シートベルトをお締めになったままお待ち下さい。
物入れを開けた時に、手荷物が滑り出る恐れがありますので、お気を付けください。
この先、電波を発する電子機器もご使用になれますが、携帯電話での通話は周りのお客様のご迷惑になりますのでお控え下さい。
飛行機は◯◯番ゲートに到着する予定です。
皆様、今日もANAとスターアライアンスパートナーとのコードシェア便をご利用いただきまして、ありがとうございました。
皆様の次のご搭乗をお待ちしております。

JAL
皆様、ただいま◯◯空港に着陸致しました。
この飛行機は、◯◯番ゲートに到着致します。
シートベルト着用のサインが消えるまで、シートベルトはそのままお締め下さい。
上の棚をお開けになる際には、手荷物が滑り出ることがございますので、十分ご注意下さい。
ただいまから全ての電子機器をご利用いただけます。
尚、他のお客様へのご迷惑になりますので、携帯電話の通話はお控え下さい。
また、お降りの際には、携帯電話などのお忘れ物をなさいませんよう、シートポケットなどをお確かめ下さい。
(季節の挨拶や、天気を話題にした挨拶)
皆様、今日もワンワールドアライアンスメンバー日本航空と、◯◯航空、◯◯航空……とのコードシェア便をご利用下さいまして、ありがとうございました。

ここでの大きな違いは、時候の挨拶の有無ですね。
ANAでも時々行われますが、JALでは必ず時候の挨拶(もしくは到着地の観光情報など)があります。今の時期であれば、「朝晩はしのぎやすくなりましたが、厳しい残暑が続いております。皆様、体調をおくずしになりませんよう……」といった文言です。日本文化の流れを汲んだ、JALらしいアナウンスだと思います。

空港名の表現にも違いがあります。ANAは「羽田空港」、JALは「東京国際空港、羽田」。
ANA「高知空港」、JAL「高知龍馬空港」、ANA「宮崎空港」、JAL「宮崎ブーゲンビリア空港」です。

また、コードシェアを一括し「スターアライアンスパートナー」と表現することのあるANAに対し、JALでは「カタール航空、ブリティッシュエアウェイズ、ハワイアン航空……」とどこまでも並べていきます。

何となくですが、効率的でシンプルなANA、言葉を尽くすJALといった姿が見えてくる気が致します。

アナウンスの担当者の違い

ANAでは、大部分のアナウンスをチーフパーサーが行います。チーフパーサー以外のCAが実施するのはお見送りのアナウンスのみです。
お見送りのアナウンスは、機内後方に着席している年次の若いというか、資格の少ないフレッシュなCAが担当することが多いようです。

JALでは、搭乗御礼とお見送りのアナウンスは先任客室乗務員が行いますが、離陸直前のアナウンスや上空でのアナウンスは、先任客室乗務員に次ぐ2番手のCAが担当する場合が多いようです。

全ての便で上記のような担当制になっているわけではありませんが、注意して聞いてみると声の違いなどから見えてくるものがあるかもしれません。

(何が見えてくるのか分かりませんが……)

尚、両社共国際線においては海外基地のCAが外国語のアナウンスを担当する場合が多くあります。

自動音声のアナウンス

ANAでは、自動音声のアナウンスが多く取り入れられています。搭乗時に手荷物の収納などを案内するもの、ドアが閉まった時に着席を促すもの、着陸前に着席を促すものなどは、業務を確実・効率的にする観点で導入されているようです。
また、特に国際線においては、外国語のアナウンスをより安定的に伝えるために自動音声が活用されています。
スターウォーズジェットではC-3POのアナウンスが実施されるなど、サービス面でも自動音声が活用されています。

JALでも同様に自動音声が装備されていますが、ANA程聴く機会は多くありません。
搭乗中に流れる、手荷物収納を案内する自動音声のアナウンスは、思わぬ怪我や手荷物破損を防止するためでしょうか、お客様ご自身での収納を依頼しているところがJALの特徴だと思います。

おわりに

主な違いをまとめてみました。

・ANAでは英語のアナウンスを必ず実施するが、JALでは必要と判断した場合に実施する。
・ANAでは大部分のアナウンスをチーフパーサーが行い、お見送りのアナウンスを若手CAが行う。JALでは搭乗時とお見送り時のアナウンスを先任客室乗務員が行い、それ以外を2番手のCAが行うことが多い。
・JALでは着陸時、毎回内容の異なる時候の挨拶を取り入れたアナウンスを行う。
・ANAでは自動音声のアナウンスを積極的に取り入れている。

といったところでしょうか。
今回私が感じたのは、違いよりもむしろ共通点の多さでした。
「本日」と「今日」、「共同運航」と「コードシェア」などなど、言葉の違いがあるものだと思っていましたが、両社共同じ言葉を使っているようですね。

今、両社共にコロナ禍の真っ只中にあって、アナウンスの内容も目まぐるしく変わっています。

コロナ禍が落ち着く頃……、飛行機のアナウンスも新しい時代に合ったものに変化した姿になっているのかもしれません。その時、航空会社の個性がどのように表れてくるのか、見つめてゆきたいところです。

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