【言葉】否定の表現を控え、肯定的な印象を残す

お辞儀する和装の人 CAの仕事

CAは否定の表現をなるべく使わないようにしています。
これは、ただでさえ物資や時間の限られている機内において、「ありません」「できません」「なさらないで下さい」といった否定の表現ではなく、肯定の表現を使うことによって少しでもお客様のお気持ちを安らかに保ちたいという気持ちから生まれた工夫です。

実際に飛行機に乗ると、色々な場面でそれが実践されていることに気づきます。
お客様の着席を徹底したい時、「立ち上がらないで下さい」ではなく「お席にお座りのままお待ち下さい」と表現したり、化粧室の使用を防止したい時、「化粧室を使用しないで下さい」ではなく「化粧室の使用はお控え下さい」と表現したりします。どうでしょう? 伝えている内容は一緒でも、少しマイルドに受け止められる気がしませんか。

近頃ですと、コロナ禍の対策でブランケットの搭載を中止していることも多く、リクエストにお応えできないシーンがあります。そのような際、「ブランケットはご用意しておりません」と言う代わりに「ただ今ブランケットの提供を見合わせておりまして……」といった表現を使います。
伝えていることは一緒なのですが、少しでもマイルドな印象になるよう努めているわけです。
その上で、機内の温度を上げたり、温かいお飲み物をお持ちしたり、ペットボトルにお湯を入れて簡易湯たんぽとしてお渡ししたりといった代替手段を提案します(ちなみに、お客様にとってはベストではないけれど代替手段にはなるものを「セカンド・ベスト」と呼んだりします)。

言葉の話から少し逸れましたが、「否定形を避ける」という工夫は、お客様との少しの会話においても実践されています。

例えば、初めてロンドン線に乗務する時、お客様から現地のことを尋ねられたとしましょう。自分の持ち合わせている情報だけでは、質問に答えることができません。
そんな時、「実は私、今までロンドンに行ったことがなくてそれ知らないんですよ……」と言う代わりに「実は私、今回初めてロンドンに行くんです!」と言うと、アラ不思議、お客様の質問が解決していないという状況は全く変わらないのに、なぜかすごく前向きな感じがしませんか?(笑)
そうお断りした上で、知識豊富な同僚に応援を求めるといった具体的な対応に移ります。

以前書いた日本のサービスの背後に存在する「茶道」という文化という記事内の「気持ちを伝えるための作法」でもご紹介したように、「同じ内容を伝えるにしても、より相手が良い気持ちでいられるように」という気持ちが根底にあるのです。

一方、安全を確保するために、毅然とした対応が求められるのもまた機内です

安全のご案内に際しては「電波を発する電子機器は使用できません」「手荷物を非常口や通路に置くことはできません」「脱出時に手荷物は一切持たないでください」といった、はっきりとした否定の表現が使われます。
また、文法的には肯定文であっても「喫煙は航空法で禁止されています」「今すぐにおやめください」といった強い表現を用います。

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