どんな前職を経てCAになったか
転職してから知ったのですが、「転職してCAになった人」というのは想像以上にいるものですね。もちろん、会社によって状況は異なると思いますが、毎日フライトで一緒になるメンバーの中に、自分以外に必ず1、2人は転職組がいるくらいの感覚です。思っていたより多くありませんか……?
内訳として、
最も多いのは、エアライン他社からの転職。
次に多いのは、ホテルや旅館といったホスピタリティ業界。
次いで銀行、証券などの金融、商社、アパレル関係、一般事務など……。
また、看護師や警察官、学校教諭といった専門職から移っていらした方もいます。
(特に、看護師だった人にはよく会います。他のCAにとっても、一緒に働くメンバーの中に看護師資格を持つ人がいると心強いものです。)
エアライン他社からの転職の場合、グランドスタッフだった人が最も多く、
次に多いのは客室乗務員。
CAが他社に転職する理由は、
「国際線にも乗務して仕事の幅を広げたい」といった路線網の違いによるものや、
「転職先の企業理念やサービスのあり方に前々から共感していた」といったもの、
「引っ越したいから」といった拠点の違いによるものなど様々です。
ちなみに、少し話は逸れますがCA経験者だけを採用するエアージャパンは、その社風や制度から独特の人気があり、LCC・FSC・日系・外資系を問わず多くのエアラインから人材が集まっています。
さて、私がエアラインスクールに通ったり今の同僚達の話を聞いたりする中で感じることは、
前職が何であれ、そこで何を学び自分の力をどう育てたかは、その人次第ということです。
つまり、冒頭から既卒入社CAに多い前職を並べて書いてしまいましたが、それはあくまでも傾向に過ぎないということが言えると思います。
前職で税理士事務所に勤めていた私の同僚は、毎朝出勤して花を生けることを日課としていたそうです。それは彼女の自発的な心遣いだったそうですが、面接においてもそのエピソードに触れたと話していました。
彼女が話すと説得力がありましたし、人柄が印象的に伝わる話だと感じました。
私が転職した理由と、転職について思うこと
少し長い話になりますので、もしお時間があれば読んで下さい。
私の場合、新卒の就職活動の際にはCAを受けることなど思いもせず、それ以来ひたすら他の業界で働いて参りました。
私には昔から憧れていた仕事がありました。それは、小さい頃通った駄菓子屋さんのおばあちゃんや、学生時代に時々通った銭湯の番台さんのようないつもそこにいるだけで安心する、そんな人。
ただ一方で、「バリッバリに頭を使って、新規プロジェクトなんかバンバン立ち上げて活躍したい」という挑戦への欲求もありました。
そして、新卒の就職活動の結果、私は目指していたバリッバリ系の会社に入りました。自分の能力に自信はありませんでしたが、同期から刺激を受けながら毎日勤務を続けていました。
そんなある日、私は叔母から贈られた、よしもとばななさんの『デッドエンドの思い出』(文藝春秋社刊)という本を読みました。
老舗の洋食屋に生まれた女の子が、実家の後を継ぐことの重圧や不自由さに思いを巡らせながら、それでもおばあちゃんが亡くなった時、昔のお客さん達がお葬式にやって来てはおばあちゃんとの思い出を語ってゆくのを見て、深く感動するのです。「人の人生の、本当の意味での背景になるってなんてすごいことなんだろう」と。
私はこの言葉が心にずっと留まり、会社でメールを打っている時にも、会議に出ている時にも気になるようになりました。求めている仕事の姿が、まさにその言葉で言い表されていると思ったのです。
ちょうど時期を同じくして、私は自分の能力が限界に近づいてきていることにも気付き始めていました。
良いアイデアを出せない、計画を立てられない、仕事を振ってもらえない、交渉が出来ない……。それは努力したら詰められるとは思えない程の、能力の差でした。
そして、それよりも問題だったのは、たとえ努力して成果を出せるようになったとしても、私はこの仕事で喜びを感じられないだろう、という確信が生まれていたことです。
そして転機が訪れます。出張で飛行機に乗っていた時のことです。
私の前に、2名のCAがいました。
L側のCAと、R側のCA。その動き、表情が対照的に見えました。
2名とも飲み物を注いで提供するという同じ業務を行っていましたが、私には違う仕事をしているように見えました。
「客室乗務員という仕事は、何を行うかより、どう行うかで価値が決まる」
と、感じました。
それが、私が「人の人生の本当の意味での背景」を目指し始めた瞬間です。
今振り返れば、ここに来るまで遠回りすることになってしまいました。
しかし、前職があったからこそ、自分がしたい仕事をはっきりと自覚することが出来たと思っています。
あくまでも私の場合ですが、もし最初に就いた仕事がCAであったなら、仕事に正面から向き合うことが出来ず、今程のやりがいも感じることは出来なかっただろうと思います。(逆に、子どもの頃からCAを志望していて、新卒でCAになって、けれど「違った……」と言って転職していく人もいます。)
そして、結果的には私からお別れを告げることになってしまった前の会社の人達には、私を大きく育てていただきました。彼らから学んだことは今も私の根底にあり、彼らの持っていたマインドは今も私の目標の一部です。
まとめ
以上、転職してCAになった人の前職について、そして私が転職した経緯と、遠回りしたからこそ得られたことについてご説明致しました。
私の場合、やりたい仕事が見つかりCAになれるという嬉しさと、けれど新卒で入った会社をたった2年で辞めることにしたという失意……様々な感情がない混ぜになりながら、それでも希望を持ってCAに転職しました。
それから数年後にまさか今のような業界の危機が訪れるとは思ってもみませんでしたが、「どんな経験も無駄にはしまい」という前向きな気持ちで日常に向き合うこと、それが今出来ることだと思っています。
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