この質問の答えには、受験者がサービス業をどのくらい本気で自分の仕事として捉えているか、また、受験者がサービスにおいて大切にしている価値観が表れます。
日常生活において、お買い物や美容院、カフェ……何でもいいのですが、サービスを利用する際、そのサービスの発し手が何を思って行動しているかを想像することで、「今のサービス、素敵だな」とより深い目線で気付けるようになります。その体験にぜひ自分の価値観も盛り込んで話してみて下さい。
いくつか例を挙げてみます。
海外旅行で掛けられた「ありがとう」の言葉
あなたが海外旅行で、初めて訪れる土地へ行ったとします。仮にフランスだとしましょう。蚤の市で可愛い食器を見つけ、買いました。お店の人が商品を渡す時に「ありがとう」と日本語でお礼を言ってくれたら、少し驚くくらいうれしいと思いませんか?
あなたがサービス業を自分の仕事として追究したいと思っていれば、おそらくその店員さんがどんな思いで「ありがとう」と言ったのかな? と考えると思います。そして、ショッピングを終えた後も、しばらく店員さんの様子を観察してしまうのではないでしょうか。
店員さんが、色々な国から来たお客さんにそれぞれの言語で挨拶をし、楽しそうにコミュニケーションを取っています。そして、どうしても意思疎通が出来ない時には英語を使って話しています。その様子を見て、あなたはこう思います。「英語は便利だけど、それに加えて相手の言語をたった一言でも話してみると、気持ちがもっと伝わるのかもしれないな」と。
その体験を次のように話してみてはいかがでしょうか。
先日フランスの蚤の市でお買い物をした時に、お店の方が日本語で「ありがとう」と言って下さって、大変嬉しく思いました。その方はお客さん一人一人に相手の言語でお礼をおっしゃっていて、世界の共通語である英語だけでなく相手の言語を少しでも話せると素敵だなと感じました。
いかがでしょうか。あなたが店員さんの仕事をただ見ていたわけでなく、自分のこととして捉えていることが伝わってきます。また、異なる言語を使うお客様に少しでも寄り添いたいと考えるあなたの価値観が伝わってきます。
海外旅行で現地語で話し掛けられた体験
さて、夜になり、あなたはドレスに着替えパリのお洒落なレストランに出掛けました。お店の人から、にこやかにフランス語で夜の挨拶をされたら、それもまた嬉しいと思いませんか? あなたがフランス語を話せるのなら、なおのこと会話が弾む場面になるでしょう。
しばらく観察してみると、そのお店の人はどのお客さんに対してもフランス語で会話を試み、通じなかった時にだけ英語に切り替えているようでした。
それが何故なのかを考えると、こんなことが言えるのではないでしょうか。
先日フランスのレストランを訪れた際、フランス語で迎え入れて下さったことです。そのお店では、全てのお客様をまずフランス語で迎えていました。お客様を尊重し、見た目で判断しないという姿勢が感じられ、勉強になりました。
今回、あえて対照的な例を出しました。
大切なのは、「何が起きたか」ではなく「なぜ感動したのか」を説明することです。そこにあなたの本気度、価値観を表現しましょう。
大繁盛のジンギスカン屋さんの丁寧な接客
新橋で美味しいと評判のジンギスカン屋さんを初めて訪れたとします。お店の前に行列が出来ていましたが、店員さんがちょこちょこ出てきてはお客さんの順番を確認し、待ち時間を伝えているので、待っている人にもいらいらした様子がありません。
ようやく順番が回ってきて、お席まで案内されました。店員さんの話し方はゆっくりと丁寧ですが、手元はもの凄い勢いで仕事を片付けています。ここであなたは、このお店の人気の理由が美味しさだけではないことに気付くでしょう。
新橋のジンギスカン屋さんで体験した丁寧なサービスに感動しました。お店は大繁盛で大忙しなのですが、こまめにお店の外に出ては行列を整理し待ち時間を伝えて下さいました。店内での対応も丁寧なのですが、一方で店員さんの動きはテキパキとしていて無駄がなかったので、これは多くの仕事を素早くこなす技術があるからこそ、お客さんに向き合う余裕が生まれているのだと感じました。
いかがでしょうか。あなたがお店側の目線も持って観察していたことが伝わりますし、上辺だけの接客ではなく、その根底に確実な技術が必要だと考えていることが伝わってきます。
歯科医院の先生から感じた真心
最後にもう1例紹介します。
あなたが通っている歯科医院の先生はいつも笑顔がなく、少し怖い表情をしています。しかし、ある日治療の状況について疑問に思ったことを口にすると、パッと笑顔になって優しく説明してくれました。
あなたはそこで歯科医師の本心に気付き、サービスにおいて本当に大切なことは何か考えさせられました。
サービス業とは少し異なるかもしれませんが、今お世話になっている歯科医師の先生は普段私の口を真剣に覗いて治療をして下さるのですが、私が質問をすると笑って下さるんです。その笑顔が自然で、愛情に溢れていて、私はいつも感動してしまうのです。相手の幸せを想う真剣な気持ちがあってこそ、嘘のない笑顔が表れるのだと気付かされました。
サービス業においてなぜ笑顔が大切だと言われるのか? ただ笑っていればいいのか?
「笑顔が大事なんて当たり前」で考えを止めずに、笑顔の本質について考えていることが伝わってきませんか?
まとめ
今回の記事では蚤の市、レストラン、ジンギスカン屋、歯科医院の例を挙げました。
何も高級ホテルで体験したサプライズとか、そんな特別なものでなくてよいのです。日常生活の中でアンテナを張っていれば、スーパーマーケットでもバスに乗る時でも感動することはあると思います。
お客さんへの寄り添い方、チームワークの良さ、安全を守ろうとする姿勢、トラブルが起きた時の対応……色んな観点でサービスを観察してみて下さい。そこであなたが抱いた共感や学んだことを整理して、いくつもいくつも書き溜めてみましょう。そうしているうちに、自信を持って「最近感動したサービス」を語ることが出来るようになります。
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