初フライトで知った、CAのやりがいと本質

右窓から見たエンジン CAの仕事

私の初フライトは、国内線の日帰り勤務でした。東京を飛び立って地方空港に到着後、ほとんど休む暇もなく折り返して来るという内容です。

それはあっという間に終わりましたが、今でも当日のアロケーションチャート(乗務員氏名、飛行計画、非常用アイテム搭載位置などを記したメモです)を大切に保管しており、それを開くと当日のことを思い出します。

最初の一杯が見せてくれた一期一会

初めて私が飲み物サービスを担当したお客様は、飛行機の右側通路、1列目にお掛けになっていたご年配のお客様でした。
召し上がったのは、冷たいジュース。

訓練でたくさん練習した甲斐あって、機内は揺れていたものの、スムーズに飲み物をご用意することができました。

お客様はカップを受け取ると、こちらを見て柔らかく微笑んで下さいました。

今、私がCA人生最初の一杯を作ったとは思ってもいらっしゃらないでしょうが、私にはそのお客様の微笑みが、私を祝って下さっているように感じられました。本当に勝手なことですが……。

お客様と、私とがそれぞれの思いを背後に抱えながら、機内で一瞬だけ微笑み合う。
その関係は、不思議な軽さを持っていると思いました。
「忘れられない軽さ」とでも言うような、重みのある軽さです。

これが一期一会ということなのかな、と感じた瞬間でした。

客室乗務は風のような仕事

目の前には、先程と同じように空港が広がっていました。
乗務が終わり、東京で解散したのです。

「あれ、私、確かにさっきまで飛行機に乗って遠くへ行っていたはずなのに、どうして東京にいるんだろう……」

文字に起こすと間抜けな感じがしますが、私にはその時、まるで最初から何事もなかったかのように感じられていました。
お客様と会ったことも、私自身が飛行機に乗っていたことも、幻だったのでは……。
0に足し算をした後、同じ数だけ引き算をして、0に戻っちゃった、というような不思議な感覚でした。

ふと、最初の一杯を差し上げたお客様の顔を思い出しました。
幻のように終わった1日だったけれど、あの微笑みは確かに存在したはずです。

しばらく思いを巡らせた後、私は知りました。
客室乗務というのは、吹き抜ける風のような仕事なのだと。

それは人の目には色付いて見えない程、儚く希薄な存在です。

ただ、時には野の草を揺らしたり、樹々から花を降らせたりする。
人の肌にやさしく触れて季節の訪れを知らせることもあるでしょう。

であれば、私は出来るだけお客様が心地良く、心を和ませる風を吹かせたい。

CA人生を掛けて、風のようにさりげない一杯をどこまでも積み上げていきたい。
それが私にとってのやりがい。

その時、心の中で覚悟のようなものが決まったのです。
3年以上が経ち仕事の幅が広がった今でも、その考えは変わっていません。
(嵐を吹かせてしまったこともありますが)

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