近年、ANAやJALなど国内大手航空会社でも男性の客室乗務員が採用されるようになりました。今後ますます一般化していくと予想される国内での男性の採用について、これまでの経緯なども踏まえつつ書いて参ります。
今は採用自体中止されていますが……
男性CAはどうして少なかったのか
数年前まで、日本国内で男性CAを見掛ける機会は殆どありませんでした。見掛けても、総合職の社員であったり、外国ベースのCAであったりという場合が多い状況でした。
男性でCAを志望する人は、外資系の航空会社を視野に入れて就職活動を行うのが一般的であったように思います。
最近ですと、LCCはもとより、ANAやJAL、そのグループ会社であるANAウイングスやエアージャパン、日本トランスオーシャン航空などでも男性CAを見掛けるようになりました。
そもそもなぜ、男性は極端に少なかったのでしょうか。
「男性を排除していた訳ではない。受験する母数が少なく、採用基準に合致する人がいなかっただけ」というのが航空会社の説明としてよく耳にする内容だったように思います。ですが、日本では航空黎明期から女性が活躍出来る数少ない職業の一つとして、また、いわゆる嫁入り前の職業としてスチュワーデスが定着してきた歴史があり、会社にとって管理や賃金の都合から男性の採用を控えていたと考えるのが自然でしょう。
最近になって複数の国内エアラインが男性を採用し始めた様子を見ると、これまでも別に女性を採用することに強いこだわりがあったわけではないという感じが致します。多数の応募者がいる中で、男性を採用する必要性が特になく、どちらかというとコストが増えそうだから、くらいの感覚で避けていたのではないでしょうか。
昨今増加している男性の採用は、「多様性」がキーとなる現代にそぐうものですし、CAを目指す男性にとっては喜ばしいものかと存じます。
性別にとらわれないことが大切
男性の採用に漕ぎ出したばかりの航空会社では、採用担当部や面接官もまだ男性の受験者を見極めるノウハウを十分に持っておらず、担当者によって判断に差が出るのではないか? と私は想像していました。しかし、これまでお会いした男性CAには、性別を理由に面接などで特別な扱いを受けたと感じたという人はいませんでした。有利ということもなければ不利ということもないということです。
ですから、変に気負わずネガティブにもならず、他の受験者と同じ土俵にいるのだという意識を持って臨むこと。これが自分の魅力を正しく伝えるために大切な姿勢だと思います。
よくある男性の自己PRとして、ことさらに体力をアピールしたり、「男性だからこその安心感」をアピールしたり、保安要員として活躍出来ることをアピールしたりするケースがあります。しかし、その内容が受験者の性別(=男性であること)によってしか裏付けられないものだとしたら、受験者の魅力は存分に伝わりません。なぜなら、男性であるという理由だけで採用に至るわけではないからです。
男性ならではの能力をアピールしたい場合でも、その理由を性別ではなくあなた自身のスキルで説明しましょう。「男性だからこその安心感」などというものはわざわざ言葉で説明しなくとも雰囲気で醸し出せば充分です。
確かに、会社が男性を採用する以上「男性が欲しい」という考えはどこかにあるかもしれません。
しかし、何度も言うようですが、性別で採用を決めているわけではないのです。
特に日系のエアラインでは協調性が大変重視されますので、異性だからという理由で周囲の女性との間に線を引いて張り切る感じの人よりも、周囲の一人一人と対等に向き合い協調していける人の方が適していると判断されるでしょう。
飛び続ける覚悟を示そう
男性の受験者にしばしば見られるのが「いつかは内勤や総合職に転向して昇進したいかも……」という考えです。
客室乗務職の採用で会社が求めているのは、あくまでも客室乗務員です。定年までとは言わなくとも、会社に勤める限り長く乗務し続ける覚悟が必要です。
CAの持ち場は、キャビン。入社前から「ゆくゆくは地上で……」と言っている人を会社がCAとして迎え入れるでしょうか?
ここで気を付けていただきたいのは、私が「乗務に固執すべきだ」と申し上げているわけではないという点です。CA人生においては、実際に地上配置や内勤になることがありますし、面接においても「地上配置になったら前向きに取り組めますか」といった質問が出ることがあります。そんな時に「いえ、私はずっと乗務し続けたいと思います」と答えるべきではありません。
乗務し続ける覚悟、尚且つ、地上配置の機会があれば前向きに取り組む覚悟。この二重の覚悟を持つことが求められているのです。
採用においては「CAへの志望度」以上に「会社への志望度」が測られます。それを示しましょう。
面接で「地上配置になっても頑張ります」と言ったからといって「じゃあ、あなたにはCAじゃなくて総合職として入社してもらおうかな」とはなりませんから、安心して会社への志望度をアピールして下さい。
とにかく、乗務に対しても地上配置に対しても前向きに取り組む姿勢を示すことが大切です。
まとめ
今回は「男性CAに求められていること」という題で書いて参りました。結局のところ男性CAに求められていることは女性CAと同じというのが結論です。少なくとも選考の場においては、男性であることをあえて自分からアピールポイントにすべきではないでしょう。
ちなみに、受験の先の話になりますが、私が実際に働く中では、男性がいるとクルーの雰囲気が和やかになることが多くありますし、難しいお客様の対応で頼ってしまうこともあります。
また、時代が変わってきているとは言え、社員の中には性別を気にする人もおり、男性だからという理由で優しくされたり厳しくされたりすることもあるかもしれません。
現状の人数だと、たまに同じ便に1名男性がいるというくらいなので、何だかんだ言ってもまだまだ稀有な存在なのです。
その視線を過剰に取り込まず、それとなく心に留めて職場に参加していく。
そのバランス感覚を持つことで、元気に働いていけるような気がします。
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