【スペイン】サンセバスチャン、美食バルとチャコリに酔う海辺の1日

サンセバスチャンの海 欧州

近年日本からご旅行で訪れる方も多い(私もその1人)、スペイン北部バスク地方の美食の街、サンセバスチャン。
都会の喧騒とは無縁の、しかし洗練された街並みが広がる王道の保養地。
陸地のアクティビティは多くありませんので、この旅では太陽の日差しと美食、そして地酒チャコリに身をゆだね徒然なる時間を過ごしました。

(※現在新型コロナウイルス感染拡大を受けスペインへの渡航中止勧告が出ております。この記事では、2019年に訪れた際の出来事を振り返りながら記憶の旅に出ました。)

サンセバスチャンは行き方から迷わせる

どのバルを訪ねるか。どのピンチョスを食べるか。いいえ、サンセバスチャンの旅は行き方を選ぶところから始まります。

まず、日本とスペインを結ぶ直行便は、イベリア航空の成田ーマドリッド線のみ。

(※そちらも2020年3月から運休しています。)

そして、サンセバスチャン空港行きの便が出ているのは、マドリッド空港、バルセロナ空港、パルマ・デ・マヨルカ空港のみ。
さらに、サンセバスチャンの近くには、同じく美食やグッゲンハイム美術館で有名なビルバオがあり、ビルバオ空港サンセバスチャン空港より規模が大きく利便性が高い。

つまり、純粋にサンセバスチャンだけを目的地とするなら、成田ーマドリッドーサンセバスチャンというルートが最短ですが、日程に余裕があれば、ビルバオ、バルセロナ、それらの空港に就航しているヨーロッパの諸都市を巡る日程にすると、より豊かな体験に満ちた旅になると思います。

ちなみに、私はずっと訪れたかったロンドンをミックスして、東京ーマドリッドーサンセバスチャンーバルセロナーロンドンー東京という旅程にし、乗り継ぎを活かしてそれぞれの地で観光を致しました。

朝焼けのラ・コンチャ海岸をひとりじめ

サンセバスチャンの始まりは朝。
誰もいないラ・コンチャ海岸へ歩けば、ビスケー湾を縁取るフレームのような瀟洒な柵が見えてきます。この白い柵は、1916年に作られた後100年以上もサンセバスチャンの街を見守ってきましたが、老朽化のため2018年に新しい物と交換されました。

昼間は大勢の人で賑わうこのビーチ。昨日ここに遊んだ人達の声がまだ残っているように感じられる朝のひとときです。

バル巡りで始まるエンドレスパーティー

サンセバスチャンの街には、100以上のバルが軒を連ねています。どのお店に伺うか悩ましいところですが、今回私は美食家の友人からすすめられたバルを中心に巡って参りました。ここでは、特に舌と心を動かされたお店を4軒ご紹介致します。

・Bar Borda Berri

旧市街でもひときわ人通りの多いエリアにある「Borda Berri」(ボルダベッリ)は、「新しい小屋」という意味です。店内は狭く雑然としていますが、地元の人達と観光客の活気に満ちています。
注文を受けてから作って下さるタパスは、いつも出来立て。アレルゲン情報の付いた英語のメニューも用意されています。名物は、牛頰肉の赤ワイン煮(€3.8)とチーズリゾット(€3.3)です。

Borda Berriの陽気な看板
忙しくても親切なお兄さん
冷製スープ(€3.8)。クリーミな中に魚介のヒントも感じられる複雑な味。
イディアサバルチーズのパスタリゾット(€3.3)。風味のある塩味。

各メニュー、サイズが小・中・大と用意されていますが、他のバルを訪れることを考えると、小にとどめるのが良いのではないかと思います。

・GANDARIAS

「GANDARIAS」(ガンダリアス)は、奥にシックな雰囲気のレストランも併設されたお店。大変な盛況ぶりで、今回訪れたバルの中でも特に多くの日本のお客様と出会いました。
ピンチョスのメインとなる食材の味わいを引き立てるように、ドライトマトなどの野菜や香辛料、ソースが巧みに織り込まれており唸らされます。

GANDARIASの軒先。何度訪れても賑わっていました。
少しお皿の上が散らかってしまいましたが、時計回りにエビとタルタル、ゴートチーズ、イベリコ豚、薫製サーモン。

すぐ近くには「GANDARIAS」という同じお名前の食料品店があり、ムール貝、アンチョビ、フォアグラ、白アスパラ……など小さな缶詰めが豊富に取り揃えられています。

・La Viña

こちらはチーズケーキの名店「La Viña」(ラ・ヴィーニャ)。店員さんも日本人に慣れていらっしゃるようで、日本語で気さくに迎え入れて下さいます。

写真だけでも楽しげな雰囲気が伝わってくると思います。

バスクチーズのケーキが有名なお店ですが、アンチョビホイップしたクリームチーズクリスピーな生地で包んだ細長いピンチョも印象深い一品でした。通常ピンで刺した物をピンチョと呼ぶそうですので、正確にはピンチョではないのかもしれません。
食感のコンビネーションが楽しく、細長く食べやすいので素材の味覚が心地よく体に入ってきます

アンチョビとクリームチーズの包み仕立て

・Casa Urola

「Casa Urola」(カーサ ウロラ)は、2階がレストランになっているお店です。1階のバルスペースでは、高級レストランに引けを取らない上質なピンチョスやタパスを手軽にいただくことが出来ます。作り置きのピンチョスにしばしば見られる乾燥もなく、新鮮な味を楽しむことが出来ます。

ハムと青唐辛子のサンドウィッチ、煮マグロのピンチョ
タコのじゃが芋スープ仕立て。両者の甘みが手を取り合いながら愛し合うように喉を流れていきます。
フォアグラを豆のスープと共に。食感、味覚といった概念が口の中で渾然一体となる感覚。
サーモン、海老など新鮮な魚介のピンチョス。土台となるバゲットも柔らかく美味です。
牛ステーキは柔らかいだけでなく強力な味わいがあります。パプリカ、チーズクリームと共に。

地酒「チャコリ」は太陽の泡をいっぱいに浮かべて

さて、バルを訪れたならば飲みたいのが、バスク地方産の微発泡性ワイン「チャコリ」。脚のないカップに高い位置から注ぎ、泡をいっぱいにして香りを出す独特のいただき方が特徴です。
シャンパーニュ程のインパクトはありませんが、まるで太陽を溶かし込んだようなきらめきと朴訥とした味わいがピンチョスの素材に実によく合います。

チャコリを注ぐシーン。「Munt」にて。
旧市街のお土産物店に陳列されたチャコリ。「チョミン エチャニス」(右から2番目)がガツンとくる強さの中に香りやストーリー性があり、好きでした。

バルを巡りながら、色々な銘柄のチャコリを味わうのも楽しいと思います。あまり長持ちするお酒ではないとのことですが、お土産にも喜ばれることでしょう。

(※お酒をお土産になさる場合、100mlを超える物は機内にお持ち込みになれないことと免税範囲にご留意下さい。スペイン以外へ入国される場合は特に各国の規定にご注意下さい。)

ラ・ブレチャ市場で見つけた宝物のオリーブオイル

バル巡りの休憩を兼ねて、サンセバスチャンの台所、ラ・ブレチャ市場を訪ねます。
こちらも旧市街のバルが立ち並ぶエリアにありますので、気軽に立ち寄ることの出来るスポットです。場内は広く、鮮魚生ハムチーズといった食材からチャコリに至るまで買い揃えることが出来ます。

piperrakはバスク語。英語のpepperにあたるよう。

さて、こちらの市場で見つけたオリーブ専門店「Bretx Oliva」は、おびただしい種類のオリーブとオリーブオイルを取り揃えています。お店の方からすすめられ試食させていただいた中でも、私がその美味しさに驚いたのは「Bretx Oliva」

後から気づいたのですが、お店と同じお名前の商品でした。
まるでオリーブを今この瞬間に口の中で搾油しました、というような極めてエクストラバージンな香りと風味があります。サンセバスチャンを再び訪れる時には、買い求めたい一品です。

日差しが肌の上をスキップするラ・コンチャ・ビーチ

サンセバスチャンの旅で忘れてはならないのが、ラ・コンチャ海岸でのビーチングです。
強すぎない日差し穏やかな海に恵まれた、徒然なる避暑地の1日を過ごすことが出来るはず。

私は海中でクレジットカードを紛失するというトラブルに見舞われながらも、穏やかなお天気のお陰で心を乱されることなく、日が暮れるまで可愛らしい子どもたちが砂の上に絵を描くのを眺めておりました。

おわりに

サンセバスチャンの食文化に触れると、それを日本へ帰って少しでも再現したいという気持ちに駆られました。お店ごとの違いを味わいながら、その調理法や使用されている食材に詳しく目を向けながら食べ歩くのも、楽しい過ごし方の1つだと思います。

さて、私は何十軒ものバルを見て周る中で、ある共通点に気付きました。
それは、お店の看板や内装に使われている文字の書体が似ているということです。

調べてみたところ、それはまさにバスク文字と呼ばれるもので、古くから石碑に文字を刻む際などに用いられていたのだとか。改めて、この地方の歴史の深さと民族の血の香りに気付かされる出来事でした。

サンセバスチャンは3日間の滞在期間を通してほとんど快晴でしたが、1度だけ俄か雨に降られました。帰国後、荷ほどきをして傘を畳み直していると水滴が落ち、思わず雨に濡れた美しい街並みがフラッシュバックしたのでした。

サンタ・マリア・デル・コロ教会。サンセバスチャンの守護聖人が祀られています。





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