一流の人とは、どのような人でしょうか。
それは機内では分からない、というのがこの記事の主旨です。
私は転職する時に、心に刻んだことがいくつかありました。
(※私は2年間のオフィス勤めを経てCAに転職をしました。)
その内の一つに、「自分に見えているものは、世界のほんの一面に過ぎないことを忘れないでおく」ということがあります。
きっと、CAとしての経験を積めば積むほど、視野が広がる感覚、自分の力が高まった感覚を覚えるに違いない。
毎日多くのお客様と接し……
色々な場所を旅する……
CAは仕事の中で、他の多くの職業では経験しないようなやや特殊な経験を積むことができます。
しかしそれは、やや特殊な経験しか積むことができないということでもあります。
日本発のフライトは長いものでも12時間程度です。
お客様にしても、同僚にしても、特定の相手とじっくりと時間を掛けてお付き合いをする。そんな機会は、何か特別な配属(地上配置など)にならない限り巡ってきません。
雑誌などを読んでいると、元客室乗務員の方が以下のようなことをおっしゃっていることがあります。
「ファーストクラスのお客様は、お化粧室の使い方も一流」……
「ファーストクラスのお客様は、座席での過ごし方がスマート」……
「一流のお客様は、客室乗務員の目を見て挨拶をなさる」……
多くの乗務経験を通して、ファーストクラスのお客様に共通する習慣などの傾向を学び取ることは、素晴らしいことだと思います。
ですが、それをもって相手を「一流」などとジャッジすることは、浅はかで不遜なことのように私には思われるのです。
私どもが目にするのは、お客様が機内でお見せになる、ほんの一面でしかありません。お客様が普段の生活においてどのような信念を持ち、どのように人と向き合っているかなど、私には想像することすら憚られます。
化粧室をご使用になった後、跡形も無く元通りにしてキャビンに戻るお客様というのは、確かに存在します。そんな方を見ると、「あっ、何て素敵な方なのだろう。さすが……」と感じることも事実です。
しかしそれは、お客様が「一流」であるかどうかとは関係ありません。お客様が「化粧室の使い方において一流の人」、さらに申し上げれば、「化粧室を使う際に、次の人のために心遣いをなさる人」という、確かなことはそれだけです。
人間の程度というのは、そう容易に測れることではないと思います。
飛行機が出発して到着するまでの限られた時間しか相手と接することができない以上、そこで為し得ることを最大限見つけ、心を尽くす。CAにできるのは、それだけではないでしょうか。
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