航空業界の男と女の役割分担

浜辺でヨガをする男女 CAの仕事

パイロットはお父さん

出発前の機内、先輩CAが「あれ、お父さんはまだ来てない?」と言ったことがありました。私は最初何のことだろうと思ったのですが、航空業界ではパイロットのことを「お父さん」と呼ぶ習わしがあるようです。「明日もお父さんと一緒のパターン」、「お父さん達とはここでお別れね」のように、よく耳にする言葉です。
コックピットにはお父さん、客室にはお母さん。
私達はフライトごとに家族を作るような感覚で乗務をしているのです。
ただ、実際にはお父さんが女性のケースもあります。

男女の違い=職種の違いのように扱われるのは、すごいことですね。
会社によってはロッカールームの名前が「客室乗務員ロッカー室」といった名前になっていることもあります。ロッカールームは「女性ロッカー室」「男性ロッカー室」のように性別で分けるのが一般的だと思いますが、それが職種に置き換わっていても違和感がないくらい、航空業界では性別の役割分業が当たり前に存在してきたということだと思います。

何年も前のことですが、古くからこの業界にいらっしゃった方が、こんなことを話していました。
「飛行機はバランスで成り立っています。男性のパイロットが多く、女性のCAが多いというのは、要はバランスなのです。全体を統率するパイロットと、お客様やキャビンの出来事に対応するCA。全体と細部でバランスが成り立っているのです」
というお話でした。

事実、日本の空の世界はそうやって役割分業をしてきたので、彼にとってはごく自然な考えだったと思いますが、そもそも男・女というくくりではなく個々の能力に着目することが、より良いフライトを作るために大切なのではないでしょうか。

お客様に夢を届けるのは女性

またまた私の経験したエピソードで恐縮ですが、聞いて下さい。
入社して間もない頃、私は悔しい思いをしました。
会社の先輩から、「この会社にはたくさんの人が働いていますが、お客様に夢を届けられるのは女性です。皆さんに期待しています」とエールを送られたのです。

目を輝かせて聴いている同期もいましたが、私は女だからCAを目指したわけではありませんでしたし、女だから特別に出来ることがあるとも考えていませんでした。
私が心の中に燃やしていた炎を、「あなたは女性だから、お客様に夢を届けられる」というハロン消火器のような一言で消された。この悔しい気持ち、伝わりますでしょうか??

今になって振り返れば、先輩が自然な応援からそう口にしたことが想像出来ますし、エールを送って下さったことに感謝しています。
この業界で女性に課される期待は独特なので、その先輩のような考えは、ごく自然に存在しています。

航空会社(特に、フルサービスキャリア)の広告には、女性のスタッフがお客様につかえるシーンの写真が多く使用されます。そこにニーズがある以上、効果的な広告を打つためにはやむを得ないのかもしれませんが、少しいびつだと思います。

私は、自分が女性だという理由で何かを期待されたり、逆に何かを諦められたりするのは不本意なのです。
女性の能力、ではなく自分の能力。そういう捉え方で自分自身を見つめることが、誇りを持って働くことにつながると思います。そうでなければ、何か壁にぶつかった時に、「どうせ女だし……」と言って逃げてしまうでしょう。

男性CAが活躍中

今度は男の人の話を致します。最近増加中の男性のCAと話していると、人にもよりますが、キャビン・マイノリティーであることを良くも悪くも特別なプレッシャーだと思っている方がいます。

ホテルから空港へ向かうバスに乗り込む時、私達はドライバーに荷物を託し、荷台に積み込んでもらうのですが、そんな時率先して積み込みを手伝う男性CAは珍しくありません。
美しい心遣いだなぁと感じながらも、「それはドライバーの方のお仕事なので、どうぞバスに乗って下さい」と声を掛けてしまうこともあります。彼がもし女性CAから荷物の積み込みを期待されていると思い込んでいるのならば、そんなことないよと教えてあげたいのです。

自分を必要以上にへりくだらせることは、他人を下に見ることと何ら変わりないと思います。

実際には色々な考えの人がいるので、自分の理想だけで動くことは難しいかもしれません。今後、フルサービスキャリアでも男性CAが増えてゆけば、特別なプレッシャーを感じずにただのCAとして働く環境が出来るでしょう。今は過渡期という感じだと思います。

男性CAについてはこちらの記事にも書いていますので、お暇でしたら読んで下さい。

変わってきている日本の空

日本の航空会社も地球各地をつなぐビジネスをしている以上、世界のトレンドから目を背けるわけにはいきません。多様性を尊重するため、キャビンの状況も変わって参りました。
大手航空会社が男性CAを採用し始めたことや、CAの制服にパンツスタイルを取り入れる、ひな祭りフライトを取りやめるといった対応も、そうした変化の一端で起きた出来事です。

何かを変えるというのは大変エネルギーの要ることですが、今後このような変化を通し、紆余曲折を経ることにはなりましょうが、飛行機の旅はもっと豊かで楽しいものになるのではないかと思います。
男性CAや女性パイロットが物珍しく話題になるような時代が過ぎて、本当の意味で多様な人材が結集し力を発揮出来るような時代が、やがて訪れるのではないでしょうか??

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